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企業家の立場からすれば、低い金利によって、金利が高いと実現困難である長期的なプロジェクトの計画を立てやすくなる。
企業家は、低金利を利用して、将来の生産性を向上させるための長期的なプロジェクト計画を立てる。
例えば、今ある施設の増設、新しい工場の建設、資本の増強な金利が通貨量の調整機能を果たせるのは、供給と需要の変化に自由に対応し、上げ下げが行なわれる場合に限る。
もし連邦準備制度が人為的に金利を操作したら、この調整機能が奪われてしまうことになるのだ。
後で見ていくことにするが、連邦準備制度は金利を上げ下げするための多くの道具を持って今現在の生産と販売ではなく、将来の生産性向上に備えるのだ。
人々が現在もっと消費することを選択し、預金を減らした場合、企業家が長期的なプロジェクトに使うために銀行から借り入れることができる資金量が減ってしまう。
そして金利が上昇する。
消費者が今お金を使うのであれば、現在の生産と販売を強化することが望ましい。
こうしたすっきりした動きを簡単に表現すると、「金利が、生産を調整する、そのとき時間が重要な要因となる」ということになる。
市場のアクターたちも金利決定の要因となる。
人々が今消費を望むなら、企業家はそれに対応する。
人々が将来の消費を望むなら、企業家は、消費者の希望に沿う形で資本などを配分する。
人々が今ある消費財を消費している状況なら、企業は、生産性の向上に資本をそこまで注入しない。
連邦準備制度は、金利を低く設定した。
貸出を増やそうとして企業家たちは、今のうちに長期プロジェクトへの投資をしておこうと考えるようになる。
しかし、人々は、貯蓄を増やして消費を先延ばしするという行動を取っていない。
人々は、企業が長期プロジェクトに投入する資源を増やしても大丈夫だ、というサインを送ってはいないのだ。
企業の計画した長期プロジェクトが完成したときに、預金者の預金額が低く、将来の購買力が期待できなくなる。
そうなると企業家たちは、プロジェクトを現金化しようとする。
即ち、売却しようとする。
中央銀行による金利の引き下げは、市場の動きとのミスマッチを起こす。
時間という要因を誤ったものとなる。
これまで見てきたように、自由市場で金利が下がるのは、人々の預金が増えるからだ。
しかし、連邦準備制度が意図的に、そして人為的に金利を下げると、金利は消費者の需要と経済の状態を正しく反映しなくなる。
人々は実際には預金を増やしておらず、現在の消費を減らそうとはしていない。
意図的な低金利は投資家たちを誤った方向に導くことになる。
投資家たちは、通常であれば利益が出ないので投資はしないと判断するような状況下でも、利益が出ると考えてつい投資をしてしまう。
経済全体から見ると非合理的な投資判断がなされ、その投資行動は入れた生産調整が歪められる。
遠い将来に実を結ぶはずの長期的な投資は、消費者が今すぐ消費をしないという意思を表明するときにだけ成功する。
消費者が預金することを選ばない。
それは別の言い方をすると、「消費者が高度な生産のための資源を放出ということになる。
消費者が高度な生産のための資源を「放出する」とはどういう意味か?まずは収入を、あなたが作り出した、もしくは作り出すのを手伝ったモノやサービスの代償だと考えてみよう。
あなたが経済活動のために使うお金が少ないほど、また自分で消費する品物を買うためのお金を減らし、そして預金に回すお金が多くなると、生産者が引き出すことができる実質的な預金量の総額は大きくなる。
それだけお金を借りやすくなるのだ。
その反対に、人為的に金利が低いと、人々は預金をせずに消費をするようになる。
投資家たちは、資源により多く投資するようになる。
経済は同時に、消費と投資という二つの方向に拡散するようになる。
資源は長期にわたって、誤って配分されるようになる。
その結果、企業が長期プロジェクトを完成させたときに、労働力、素材、部品など、経済学者が「補完的製造要因」と呼ぶ資源は不足する。
実質預金の総計は企業家が期待したよりも小さいものとなり、補完的製造要因もまた、期待よりも少なくなってしまう。
従って、部品、労働力、その他の資源の価格が企業家の見込みよりも上昇する。
生産コストが上昇してしまうのだ。
企業は予想していなかったコスト増のために、資金を再度借りねばならない。
借入金の需要増は金利を上昇させる。
その結果、企業の長期プロジェクトは資金不足に陥り、完成しない。
しかし、投資家たちは、低金利なのだから資金を借りてしまおうと考えてしまう。
言い換えれば、経済は、投資プロジェクトをある程度は支援することができる。
金利は、どれくらいのプロジェクトが始められるのかを示すバロメーターになる。
それによって、全預金高で支えられる長期プロジェクトの数を制限できる。
金利が政府の介入によって意図的に低く設定された場合、貸出量が増え、より多くの長期プロジェクトが開始される。
しかし、すべての長期的プロジェクトを完成させるための資金など存在しないのだ。
そして、どこからかその資金を調達することもできない。
そんなマジックみたいなことはできないのだ。
さらに述べると、人為的に低く設定された金利を考慮に入れて始められた長期プロジェクトの「内容」は、自由市場で決められた金利を考慮に入れて始められたプロジェクトとは異なる。
Mは、ある善え話を使ってそれを説明している。
Mは、人為的に金利を低くすることによる影響と、大工が家を建てる際に、実際よりも多くの建材(煉瓦など)を持っていると考えていることを比べている。
大工は、実際に自分が使える建材の量を知っている場合とは異なるサイズと建材の配分をした家を建設しようとする。
当然大工は建材が足りないので家を完成させることができない。
自分の使える建材の量に気づくのが早ければ早いほど、大工は、自分の計画を変更し、自分の労働と建材の無駄を少なくすることができる。
もし大工が建築の最終段階で建材が足りないと気づいたら、彼は完成目前の家を壊さなければならない。
大工はもちろん社会さえもが、資源を無駄に浪費してしまったことになる。
短期的に見れば、中央銀行の介入によって金利を低くすることは、バブルが膨張している時期には繁栄をもたらす。
株価と不動産価格は急上昇する。
建設ラッシュが始まり、多くの企業が生産力を増強する。
人々は高い生活水準を享受する。
しかし、経済は実体のないものであり、人々は、やがてその現実に気づかされるようになる。
過剰な投資はいつまでも続かないことが明らかになり、やがて止まってしまう。
それまでに投入された資源は無駄に消費されてしまう」とになる。
「好景気は永遠に続く」というKの幻想が大盤振る舞いの貸出を持続しても、経済の良い状態を続けることができないのには一つの理由がある。
経済学者のJ・M・Kの理論は、「スタグフレーション」の発生を説明できなかったため、一九七○年代にはアメリカ政府内での信頼をすっかりなくしてしまった。
Kは次のように書いている。
「バブル景気の後遺症を連邦準備制度が経済への介入を続ければ続けるほど、経済は持続不可能な方向に進むようになる。
それはMの例えの内容のようなものだ。
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